2022年7月27日水曜日

2012年体制」の深層 ――本書では2012年からの第2次安倍政権以降を「2012年体制」と定義づけられていますが、タイトル『長期腐敗体制』にも体制という言葉が使われています。これは、どういう意味なのでしょうか。 2012年体制とは政治学者の中野晃一さんが「55年体制」を意識し、提唱したものです。自民党を万年与党、社会党などを万年野党とした55年体制は、30年以上続いたのち、93年の細川政権の誕生により終焉しました。 その後、実現されるべきポスト55年体制とは、政権交代が可能な「二大政党制」、また官僚主導から脱却する「政治主導」であると定義されました。紆余曲折を経て、2009年の民主党政権成立により模索されてきたポスト55年体制は出来上がったかに見えました。 しかし、2012年に民主党が下野し、第2次安倍政権が誕生して以降、政権交代の可能性は実質的に消滅しました。この状態が2012年体制と呼ばれるものです。それが今日もなお続いているわけです。 では体制とは何か、長期政権と何が違うのでしょうか。政権とは人物によって語られるもので、たとえば、佐藤栄作の首相在任期は長かったけれど、佐藤政権としか呼ばれないし、小泉純一郎氏の政権も同様です。 一方体制は、固有名が消えて、固定化された権力の構造を意味します。江戸時代の「幕藩体制」や旧ソ連や中国のような「共産主義体制」といったように、つまりはトップが入れ替わっても変化が生じないほどに権力構造が強固に定まっている状況が体制なのです。 実際に第2次安倍政権が長期化する中で、我々は徐々に「安倍一強体制」という言葉を使うようになっていきました。無意識のうちにこれは単なる長期政権ではないと気づいたのです。ゆえに、菅政権、岸田政権に変わってもその権力構造は基本的に変わらない。だから体制なのです。 そして2012年体制を、私は長期腐敗体制とも呼んでいます。これは安倍氏が死去し、政治の中枢からいなくなったこれからも継続する可能性の高い権力構造なのです。こんなどうしようもない体制が事実上のポスト55年体制になってしまったのです。

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