2022年3月7日月曜日

自分に向けよう

大切なのは、自分に意識を向けることだな。 外で何が起こっていようが、自分自身に集中すること。外→東京外大教授の伊勢崎賢治さん。国連メンバーなどとして世界各地で民兵の武装解除などを進めてきた国際法と紛争解決のプロである。今回のロシアのウクライナ侵攻、さぞプーチン大統領にお怒りかと思いきや、ちょっと違った。むしろその矛先は「プーチン悪玉論」が覆う日本などに向けられていた。【吉井理記/デジタル報道センター】 「善悪」で語れるか?  ――今回のロシアの侵攻に、2月26日にはJR渋谷駅前で侵攻に反対する数百人の群衆が集まってデモをするなど、日本でも批判が高まっています。2001年のアフガニスタン侵攻や03年のイラク侵攻の時にも街の反応を取材しましたが、当時は侵攻した北大西洋条約機構(NATO)や米国などへの批判は一般にはあまり見られませんでした。  ◆米国やNATOを中心とする欧州は「善」で旧ソ連だったロシアは「悪」、プーチン大統領による侵略戦争だ、という雰囲気でメディアも報じていますからね。私たちはついつい善と悪の役割をいずれかに当てはめて物事を見がちですが、戦争はそういうものではありません。  ――え……。僕も侵略行為だと思いますが。国連でも侵略を「国家による他の国家の主権、領土保全もしくは政治的独立に対する、または国際連合の憲章と両立しないその他の方法による武力の行使」と定義すると決議(1974年)していますし……。  ◆戦火に巻き込まれた人のことを思えば、そりゃ僕だってプーチン氏はひどいと思う。早く権力の座を去ってほしい。ですが、国際法上ではそう単純には割り切れません。 「集団的自衛権の行使」論  ――どういうことですか。  ◆ロシアが侵攻前、ウクライナとの国境周辺に大規模に軍を集中させたと報じられました。これは国連憲章2条が禁じる「武力による威嚇」にあたるのは間違いない。つまり国連憲章違反です。では侵攻はどうか。やはり2条は「武力の行使」も禁じていますが、それには例外がある。個別的あるいは集団的自衛権の行使の時です。  ――補足すると、個別的自衛権は自分の国が攻撃を受けた時にその攻撃を阻止する権利、集団的自衛権は例えば同盟国が攻撃を受けた時、その攻撃を自国への攻撃とみなして反撃する権利、などと説明されますね。いずれも国連憲章51条に記されています。日本でも集団的自衛権は安倍晋三政権が15年に憲法解釈を変え、行使容認にかじを切りました。  ◆その集団的自衛権が問題なんです。今回、ロシアはウクライナからの独立を主張する「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」(ウクライナ東部の武装勢力が14年にウクライナから「独立」を宣言した政権。ロシアは22年2月に国家として承認し、同盟を結んだ)の要請に応じ、ウクライナの攻撃からこれらの政権を守るために武力を行使した、と言っている。つまり侵略ではなく、国連憲章が認めた集団的自衛権の行使だ、という主張です。 集団的自衛権の「悪用」  ――うーん。ロシアは地球上で最も強大な軍事大国の一つですし、「独立」を主張する両政権もロシアのかいらい政権と言われています。「自衛」だなんて、こじつけではないですか。  ◆そう。あくまでプーチン氏の理屈です。民間人に犠牲者が出るなど、弁解のない蛮行だと思う。ですがいくらこじつけであっても、集団的自衛権の行使、つまり自衛のためであって侵略ではないという理屈は成り立ち得る。今の国際法ではそういう枠組みになっているんです。こういうことを言うと、「プーチンの肩を持つのか」「ロシア寄りだ」などと言われますが、そういう話ではありません。  ――歴史を振り返れば、集団的自衛権はずいぶんむちゃくちゃな主張で大国に利用されてきた気がします。  ◆利用どころか悪用です。米国などNATO諸国による01年のアフガニスタン侵攻も集団的自衛権の行使を名目に行われましたし、米国が化学兵器を使ってまで軍事介入したベトナム戦争ですら、南ベトナムへの集団的自衛権行使を理由になされました。侵略というなら、国連決議はもちろん、結果的に大量破壊兵器を保持していた物証が見つからず、大義名分すらなかった03年のイラク侵攻こそ文字通りの侵略です。

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