2021年1月30日土曜日

アルバちゃん

 イタリアのナポリに住むルカ・トラパネーゼさん(Luca Trapanese、44)が、ダウン症のアルバちゃん(Alba、3)を養子として迎えたのは2017年7月のことだった。アルバちゃんは誕生直後に母親に見放され、その後20家族が養子縁組に興味を示すも、ダウン症がネックとなり引き取る者はいなかった。

ルカさんは「生後1か月にも満たないアルバとの養子縁組の電話があった時、私は『ぜひ養子にしたい』と即答して病院へ向かいました。アルバを腕に抱いた瞬間、喜びが込み上げ『ああ、この子は私の娘だ』と感じたのです。そして幸福感、不安、恐れ、喜び、熱意、好奇心、そのほかの様々な感情が一気に押し寄せました。よく『ダウン症の子を最初から望んでいたわけではなかったのでしょう?』と聞かれますが、アルバこそ私の希望。特別な贈り物だったのです」と当時を振り返る。

ルカさんは14歳の時に親友をがんで亡くしたことをきっかけに、病気で苦しむ人や障がいを持つ人々を助けるボランティア活動を始めるようになった。そして2002年、25歳の時に男性のパートナーと恋に落ち、その5年後には2人でチャリティー団体を設立。「障がいを持つ子を養子にしたい」と考えていたが、2013年に破局した。

その後、「家族が欲しい」と真剣に考えるようになったルカさんは2017年、養子縁組の申請書を提出した。スタッフには「イタリアには厳しい規制があるため、同性愛者で独身男性のあなたには、障がいを持っていたり問題行動がある子しか紹介できない」と念を押されたものの、ルカさんはどんな子であっても受け入れる覚悟はできていたという。

こうしてアルバちゃんを迎え、ルカさんの生活は一変した。ルカさんは「アルバ中心の生活に変わり、私の人生は活気に溢れ美しさで満たされました。彼女と過ごす一瞬一瞬が特別な瞬間であり、冒険となりました」と明かすと、ダウン症を持つ親の思いを次のように語った。

ある人に『もし魔法の杖があったら、アルバを治療してあげようと思う?』と、まるでダウン症が病気であるかのように聞かれたことがあります。でも実際、ダウン症は病気ではなく個性です。だから私の答えは『ノー』。アルバはアルバ、そのままで十分完璧なのです。」

「私たちが住む社会は、私たちに『美しく、完璧で、速く、ベストであるように』と教えるでしょう。でも障がい児を持った途端、今の社会では敗北を意味してしまう。ルカはそんな世界の人々に、自分の姿を通して『それは違うよ』と教えてくれているのです。」

「私はアルバのようなダウン症の子を、一人の人間として他の子たちと平等に見てもらいたい。ダウン症であってもたくさんの可能性を持っていて、仕事をして恋に落ち、結婚できることを知ってもらいたいのです。アルバは持ち前の明るさで、人々を笑顔にしてくれます。私はアルバを通し、愛情をもって接することの大切さ、そしてダウン症のポジティブな面を伝えていきたいと思っています。」

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