2022年9月9日金曜日

大事や

なぜ育ててもらえなかったのですか」生みの親へ書いた手紙…22歳になった特別養子の思い 9/9(金) 17:02 Yahoo!ニュース 64  特別養子縁組で新たな家庭に迎えられた子どもは、生みの親と法的な親子関係はなくなる。親子の交流は途絶えることが多いが、生みの親と手紙のやりとりや面会を果たした養子もいる。その子たちが大人になった今、交流の大切さを声に出して語り始めた。(読売新聞医療部・加納昭彦) もう一人のママもいるのよ まいさんとおそろいのペンダントをつけた龍生さん(東京都内で)  僕は予期せぬ妊娠で生まれたのですか。なぜ、育ててもらえなかったのでしょうか。自分のことをしっかりと知りたいんです――。千葉県の大学4年生・青木 龍生りゅうき さん(22)は15歳の時、生みの母・まいさん(38)(仮名)へ手紙を書いた。  生後4か月で、養子として新たな家庭に迎えられた。思春期にさしかかり、自分とは何者なのかを探す中で、どうしても直接確かめたいことが出てきたからだった。 龍生さんを迎えるまでを描いた由美子さん手作りの絵本  「もう一人、産んでくれた『まいママ』もいるのよ」  育ての母の由美子さん(55)(仮名)は、龍生さんが物心つく前から、繰り返し言って聞かせた。同時に、「とっても、大好きだよ」、「ずっと一緒だよ」と何度も思いを伝えてきた。「りゅうちゃん」を迎えるまでの物語を手作りの絵本にして、せがまれるままに、毎晩のように読み聞かせた。 龍生さんに会った時の思いがつづられている  育ての親が養子に、生みの親のことを伝えることは「真実告知」と言う。偽りのない親子関係を築く上でも重要だ。  縁組成立後、龍生さんは、まいさんと手紙や写真を交わし、小学校に入る前に1度、面会もした。その都度、縁組を仲介した民間あっせん機関の認定NPO法人「 環わ の会」(東京)が間に入った。 手作りのペンダントを生みの母に 龍生さんからのプレゼントを手にするまいさん。「大切な宝物」と話す=画像は一部修整しています  生まれてきた意味を知るために申し込んだ面会は、手紙を出してから1か月後に行われた。その直前、育ての父から、「思いがけない妊娠だったけれど、龍生を産みたいと思って、養子として託してくれた」と事情を聞いた。  当日は、「環の会」の立ち会いのもとで、まいさんに会った。由美子さんら育ての両親も交えて会い、まいさんと2人だけで会話を交わした時間もあった。まいさんは乳児院にいた頃の龍生さんの写真を見せてくれた。緊張や照れもあり、会話はぎこちなかったが、それでも、目と鼻が似ていると感じ、「産んでくれたから今の自分がいる」と前向きになれた。  その場で、まいさんにペンダントを贈った。四角のプレートを斜めに切った手作りで、龍生さんとまいさんの2人の名前を彫った。片割れは、自分が身につける。まいさんも大切につけており、「育ての親の心が広いから交流できる」と由美子さんに感謝する。  龍生さんは、母は育ててくれた由美子さん1人だと思っているが、「あの時、まいママに会えて、自分は何者なのかという心のモヤモヤが晴れた。欠けていた心のピースが埋まった」と振り返る。  まいさんと面会して喜ぶ龍生さんの姿に、由美子さんは「私たちに遠慮せずに、生みの親に会いたいと素直にいってくれる子に育ってよかった」と笑う。子どもが生みの親に会いたいといえるのは、帰る場所があるからだ。完璧ではないけれど、100%の気持ちで、血のつながらない龍生さんと向き合ってきた由美子さんはいう。「遠慮はしてほしくないな。親子なんだから」 生みの親「子を捨てたわけではない」  「環の会」は、スタッフが必ず間に入り、生みの親と、子どもの交流を支援してきた。昨年だけでも、過去30年であっせんした410組のうち約100組で、写真や手紙の交換を仲介した。  同会が設立された1991年からのメンバーで産婦人科医の星野寛美代表(61)は、「生みの親は子どもの幸せを考えて託しており、子を捨てたわけではない。交流は、子どもが自分を肯定することにつながる」と意義を説明する。  ただ、同会のように交流をよしとするあっせん機関はまれだ。生みの親との関わりで、育ての親との親子関係が不安定になる恐れがあるためだ。トラブルの懸念もある。ある民間機関の関係者は「生活に行き詰まり、お金を無心する生みの親もいる」と打ち明ける。 海外ではルール化、支え合う当事者 里親と特別養子縁組との違い  英国や米国、ドイツでは、交流のルールを定める。トラブルを防止するためだ。米国の多くの州では、当事者が合意した内容をまとめた文書を裁判所に提出。定めた通りに手紙の交換や面会を行うことになっている。一方、日本では、こうしたルールはなく、対応方法は民間機関によって異なる。児童相談所が交流を支援することはほとんどないという。日本社会事業大の宮島清客員教授(子ども家庭福祉論)は、「交流するならば、事前に関係者が取り決めを文書にした上で、子どもの利益を代弁できる専門家が仲介すべきだ。日本でも公的なルールが必要だ」と話している。  特別養子縁組で育った養子には、育ての親との関係や出自がはっきりしないなど特有の悩みがある。当事者同士の交流による支え合いが始まっている。  東京都内の会社員男性(26)は2020年、特別養子や育ての親らの支援団体「Origin」を設立し、「みそぎ」という名前で活動する。オンライン上で当事者が集うサロンを月1回程度、開く。  自身が養子だと知ったのは高校2年の冬、育ての父が「血がつながっていない」と口を滑らせた。自らのルーツを探ろうと、縁組をあっせんした児童相談所などを訪ねた。「自分は何者なのか」と悩んだが、養子の自分とは異なる境遇の友人には言えないし、「傷つけてしまうかもしれない」と育ての親にも相談できなかった。サロンでは、生みの親の体質や病歴がわからない不安や、人とは異なる境遇で育った、もやもやした気持ちなど互いの悩みを打ち明けあう。「専門家の支援に加え、ささいなことでも気軽に相談できる場が必要。似た悩みを持つ人がいることがわかるだけでも、安心できる」と話す。  全国の民間あっせん機関でつくる「全国養子縁組団体協議会」の代表理事を務める白井千晶・静岡大教授は「縁組後の子どもが幸せになるにはどんな支援が必要か。大人になった養子の声や経験を生かした制度設計を進めるべきだ」と指摘している。 ※この記事は読売新聞とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。

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