2020年1月30日木曜日

孤独死した40代男の部屋に見た20年に及ぶ孤立 「ひきこもり」経て親も亡くなり悲劇は起きた

ネット

突き刺さるような寒さの冬のある日、特殊清掃人の上東丙唆祥(じょうとう ひさよし)さんは、特殊清掃現場である某所の団地に向かっていた。ほどなくして、老齢の女性が現れた。
女性によると、この団地でひきこもりの末の孤独死があり、その清掃をお願いしたのだという。亡くなったのは姉の息子、つまり女性の甥っ子にあたる男性、高橋さん(仮名)だ。高橋さんは、40代前半という若さで、この団地で孤独死していた――。

死後1カ月が経過していた

近所の住民が部屋の前から異様な臭いが発生していることに気がつき、管理人室に駆け込んだ。その後、通報を受けた警察がすぐに部屋に突入したが、時すでに遅く、奥のこたつのある部屋で息絶えていたという。死因は不明だが、警察によると死後1カ月が経過していた。
80代の親が50代のひきこもりの子供を支える「8050問題」が、社会問題となっている。年間約3万人と言われる孤独死も、この問題と決して無関係ではない。私自身、元ひきこもりの当事者である。孤独死をテーマに長年執筆を続けているが、孤独死現場で亡くなった人について遺族や大家に取材すると、その多くがかつての自分と同じひきこもり状態だったことを知り、心を痛めてきた。
8050問題に代表されるひきこもりの末の孤独死は、残念ながらもうすでに現場では毎日のように起こっているのが現状だ。
高橋さんの叔母によると、この団地では、かつて姉夫婦と息子である高橋さんが暮らしていたが、父親が他界した後、ほどなくして母親も他界した。
高橋さんは、母親が亡くなる前から少なくとも20年近く引きこもっていた。そのため、母親が亡くなった後は、遠方に住む叔母が仕送りをする形で、面倒をみていたらしい。高橋さんの母親は、自ら亡き後の息子の行く末を案じていたに違いない。息子のためにわずかな遺産を、亡くなる直前に高橋さんの叔母である妹に託していた。高橋さんは叔母から月々仕送りされるお金を引き出しながら、親が亡くなった後もひきこもりの生活を続けていた。

鉄製のドアを開けて上東さんが、部屋に足を踏み入れると、廊下は、コンビニの袋やプラスチックの弁当箱、ジャンクフードの紙袋などで埋め尽くされていた。
洗面台とトイレは、長年のカビやヘドロがこびりついていて、真っ黒だった。孤独死する人の部屋は、風呂や洗面台がこのような状態になっている人が少なくない。

自分で自分の世話ができなくなる

自分で自分の世話ができなくなる、セルフネグレクト(自己放任)に陥ってしまい、掃除する気力や体力さえも無くなってしまうからだ。
奥の部屋には、背の高さまで隙間がないほどに鉄製のラックが並べられていた。その上にはテレビやパソコン、ゲーム機が配線されたままホコリをかぶっている。
テレビ画面の正面にこたつがあり、こたつに入りながら寝たり、食べたり、ゲームやテレビ鑑賞ができるように、衣食住のスペースが1カ所に固固められていた。高橋さんは、食料を調達するために外出するとき以外はほとんど、この部屋から動かなかったのだろうと上東さんは予想した。
キッチンはホコリを被っていて、少なくとも数年間は使われた形跡はなく、自炊をまったくしていなかったことが見て取れた。
「彼の1日の生活範囲は、こたつの前から座って動ける範囲だったと思う。たまにトイレに立ち、気が向けば風呂に入る。食料の調達は近くのスーパーで惣菜弁当を買いにいく位だね。それ以外の物は、アマゾンでネット購入するけど、ゴミはなかなか出せないから、箱は玄関脇の部屋に無造作に投げ捨てていたんだろうね」
高橋さんが引きこもった原因は定かではないが、両親が亡くなった後は、いちばん広い部屋を居住スペースにしていたらしい。
「母親が亡くなった後、高橋さんは、食料の調達を自分でするようになったんだと思う。お金があれば、生活費に困ることはないし、欲しいモノ

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