2022年7月16日土曜日

靖国神社

靖国神社問題とは?     日中友好協会 全国青年委員会委員長 寺沢秀文  小泉首相の靖国参拝問題について、青年委員会メンバーや若い友人等から「どうして、靖国神社参拝が問題になるの?」、「どうして中国、韓国などのアジア諸国がこんなに反対するの?」という質問がありました。  この問題については私以上に詳しい方、既に学ばれた方も多いかととは思いますが、一つのたたき台として、私なりになるべくわかり易く簡単に解説をしてみましたので、参考として頂ければ幸いと思います。ただ、あくまで当方の私見ですので、御異論等もあると思いますし、また、当方も不勉強ではありますので、間違い等ありましたら、ご遠慮なく御指摘下さい。 1.靖国神社とは?  「靖国神社」というと、戦没者を祀った特別な国家的神社かのような感覚で見られることが多いのですが、戦前はともかくも、戦後の現在は靖国神社は国家の公的な施設などではなく、基本的にはあくまで一つの神社、一つの宗教法人に過ぎません。ただ、戦前においては靖国神社は天皇崇拝、軍国主義礼讃の象徴としての位置づけが余りにも大きく、そしてそれを現在まで遺族会等を中心として精神的に受け継いでいると言えます。  この靖国神社は明治2年に明治天皇の命により、明治維新前後、国のために戦って倒れた人等を祀るために創られました。当初は「東京招魂社」と呼ばれていましたが、明治12年に現在の靖国神社に改称されました。以後、主には外国との戦争において国を守るために亡くなった人達を祀る神社として位置づけられ、先の第2次大戦までの約250万人近い人達がここに祀られており、長い間、そして今も「靖国神社に祀られることが大きな栄誉」と受け止められてきました。 2.なぜ、靖国神社が問題視されるのか?  靖国神社が問題視される一つには、戦前、この靖国神社が、天皇のために戦うこと、そして戦死した時には靖国神社に英霊として祀られることが何よりの栄誉と徹底的に教え込まれ、沢山の人達が亡くなっていったからです。靖国神社は、戦前において、この天皇崇拝を基礎とした軍国主義のシンボル的な存在であったと言えるからです。  そして、近隣諸国等が特に問題視するのは、一般戦没者と共にここにA級戦犯が一緒に祀られている(合祀)ことからです。A級戦犯というのは、第2次大戦における戦争責任を追及した「極東国際軍事裁判」、いわゆる「東京裁判」と呼ばれる裁判によって、最も戦争責任が重いとされた14人の日本人戦犯(特に有名なのが東条英機首相)を指します。このA級戦犯もこの靖国神社に祀られていることから、近隣諸国にとっても靖国神社はかつての日本軍国主義のシンボルであった共に、今もその最大の戦争責任者を祀る、近隣諸国にとっては憎しみの対象とも言うべきA級戦犯を祀った忌まわしい施設なのです。  特に中国など近隣諸国が問題視するのは、靖国神社は日本軍国主義に直結する象徴的施設であり、ここを日本政府首脳等が公式参拝することは、日本国民がかつての戦争を反省していないということ、再び軍国主義に走るのではないかという疑念が今も強いからと言えます。戦後、日本と中国とが国交正常化する時、日本が引き起こした戦争によって中国人民が被った被害を賠償する問題、すなわち「戦争責任賠償」が大きな問題となりました。中国人民の中でこの要求が大きい中で、多額な賠償請求をされたら日本側としては国交回復に応じることは無理という情況があり、これを懸念した中国政府首脳らが取った考え方は「あの戦争は一部の日本の軍国主義者(つまりA級戦犯)が引き起こしたもので、いわば日本の一般国民もそれによる被害者。同じ被害者である日本人民を苦しめるような賠償請求は放棄しよう」というものでした。したがって、もしも、ここで日本を代表する政治家、特には最高責任者でもある首相が、このA級戦犯が祀られている靖国神社を公式参拝することは、これらA級戦犯の戦争責任をあいまいにし、彼等の名誉復活を図るものであり、一般の日本国民も彼等の被害者として納得した中国人民の心情を裏切る行為であると受け止められています。同時に、日本がかつて近隣諸国に与えた痛手を日本国民は反省していないということでもある、等という観点によるところが大であるとされています。 3.憲法20条「信教の自由」と靖国神社  もう一つ、この首相の靖国参拝に関連して「憲法違反」と言うことがよく言われます。これは憲法の何に違反していると主張されているのかと言うと、日本国憲法第20条は「信教の自由」を保障し、同条第3項において「国及びその機関は、いかなる宗教的活動もしてはならない」とし、公的立場にある人、行政等が特定の宗教団体、施設等に係わることを禁止しています。これは私人の信教の自由を保障するための裏付け的な意味も持ちます。したがって、国家を代表する公的な立場の最たる首相が、現在はあくまで一宗教法人でしかない、特定の神社、すなわち靖国神社を公的な立場を明確にして参拝することはこの20条第3項に違反するというのが、その主な理由です。  かつて、ならばこの靖国神社を国家的施設として法的に明確にし、公式参拝等も憲法違反とはならないようにしようとして自民党より「靖国神社法案」が国会に提出されましたが、これは国会で否決されました。

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