2022年7月17日日曜日

南ドイツ新聞

我慢するように育てられる日本人は、生計を立てるために多くを我慢して暮らし、不満を言わない。しかし、ある一線を超えると人々は非常に感情的になる」とハン記者は見ている。「その孤独のなかで破壊的な計画を立てる者もいるかもしれない」というが、孤立し、我慢続きだった山上容疑者は、破壊的衝動を次第に高めていったに違いない。 ハン記者は、日本は多くの美しさを持つ一方、狭苦しくてモノトーンで、「都市は商業に支配され、無表情だ」と書く。都市は「同じような家屋に埋め尽くされ、集団社会による全体の構造への同調圧力があり、問題は自分と家族で解決することが期待される」 無機質な中で、人の助けも充分には得られない都会。そこでは人と同じようにやることが求められ、一方でシステムから外れて問題を抱えると、自分達で解決しなくてはならずに困窮しがちなのだ。 社会に関心がない日本 ここでいう日本のシステムとは、「会社の期待通りに働き続け、何があっても何も言わない」ことだとハン記者は続ける。 日本の仕事は、「旧態依然としたヒエラルキーのなかで、勉強したことにはかかわらず、会社に自由に配置される従順な社畜」になるか、「安価な派遣契約」で働く労働者になるかが多い。どちらにしても暮らしにくいオプションだ。 安倍元首相はさまざまな戦略を実行したように見せかけていたが、日本の「人々が暮らしやすくなるような制度改革はなく、人々の不満にも感心を示さなかった」と批判する。 「無関心、お金の追求、それらは多くの国で社会を蝕んでいる。しかし、日本ではそれらが少し極端に出てしまっているようだ」とハン記者は懸念している。 というのは「日本人は、実はほとんど集団社会に奉仕する仕事にしか興味がなく、社会的な議論やマイノリティ、隣人などには関心がない」ためだ。 英紙「フィナンシャル・タイムズ」も、今の日本では「無関心」が広がっていると指摘する。そして、日本の政治的な安定、政治家の安全が保たれてきたのはそれゆえだろうと分析する。 日本では事件直後、1930年代や60年代という、日本で政治家が暗殺された時代が引き合いに出されたものの、現代は「政治が感情を揺さぶるものではなくなっている」ため、当時とは状況が大きく異なる。現代の日本人は政治や社会に対する関心を失ってしまっているというのだ。 このような痛ましい事件を起こさないように、「孤立した男性に新たな展望を与えるにはどうしたらいいか、大きな社会的議論が日本には必要だ」。しかし、そのような議論は起こりそうにもないことに、警鐘が鳴らされている。

0 件のコメント:

コメントを投稿